2026年特別企画

2026年は、日本の金融業界と資産形成の環境が大きく進化する年となりそうです。
「金利のある世界」への回帰が本格化し、地方銀行を中心に預貸ビジネスの収益改善が期待される一方で、デジタル化の加速により金融サービスの利便性も飛躍的に向上しています。 また、NISA制度の大幅な改善が実現し、未成年者への対象拡大や債券ファンドの追加など、より多くの人が資産形成に取り組みやすい環境が整います。「貯蓄から投資へ」の流れは着実に進み、個人の金融リテラシー向上への期待も高まっています。

こうした資産形成の機運が高まる中で、もう一つ注目されるのが「世代間の資産移転」です。団塊世代の高齢化が進み、70歳以上の金融資産648兆円の過半数が今後10数年のうちに配偶者や他の親族へと移転すると予測されています。
親世代から子世代への資産の引き継ぎは、単なる財産の移転にとどまらず、家族の絆や将来設計に深く関わる重要な課題です。相続税、遺産分割、不動産や金融資産の取り扱い、そして親との対話。これらに対して、いざその時になって初めて向き合う方も少なくありません。

そこで、アイフィスでは2026年特別企画として、「親の相続」をテーマに、これから相続に直面する可能性のある世代の声を集め、リアルな実態を明らかにしていきます。

【特別企画】
「届けたい人に届いていない」という話
―相続コミュニケーションを、生活者目線で考えてみました―

新年あけましておめでとうございます。 本年もどうぞよろしくお願いいたします。
年末年始、いかがお過ごしでしたでしょうか。
帰省された方も多いかもしれません。久しぶりに親御さんと過ごして、「元気そうで安心した」と思った方。あるいは「少し老けたかな」と感じた方もいらっしゃるでしょうか。
私たちの会社でも、年明けに「お正月どうだった?」という雑談がありました。その中で、ふと気になる話が出てきました。

「親と話したいことがあるんだけど、なかなか切り出せなくて」

実家のこと、将来のこと、お金のこと。聞いておきたいけど聞けない。話したいけど話せない。そんな声が意外と多かったんです。

新年早々、重たい話で恐縮ですが、今回はその「話せない」に着目して親との相続コミュニケーションについて考えてみました。

親が持っている資産について知っていますか?

突然ですが、親の資産について、皆さんはどのくらい把握されていますか?

まずは全国の30代から50代の男女500名に、「相続に関するアンケート」を実施した調査結果をご覧ください。

Q.親の資産に対しての把握状況を教えてください 親の資産に対しての把握状況 結果のとおり、「親の資産について詳細を把握している」と答えた人はほぼいませんでした。

把握できていない理由についても聞いたところ、圧倒的に多かったのが「聞きづらい」というもの。

Q.親の資産を把握できていない理由は? 親の資産を把握できていない理由 聞きづらい理由は、「遺産目当てと思われそうで抵抗がある」 「お金の話を親が嫌がる」など、話題にしづらいことが挙げられました。
続いて多かった「話すきっかけがない」という回答では、何かしらの契機がないと相続の話がしづらいという一面も伺えました。

さらに、「資産について話し合いをしたことがあるか?」との問いには77.6%の人が「話し合いをしていない」と答えました。調査結果からも、親子間での話し合いに至るまでのハードルがかなり高いことが浮き彫りになりました。

お金の話は、なんとなくタブー。
親が元気なうちに将来の話をするのは、縁起でもない気がする。何より、親の方も話したがらない。 結果、お互い「そのうち話そう」と思いながら何年も経ってしまうのです。

資産に対しての認識の相違

そして親からよく聞かされるのがこの言葉です。

「うちは大した財産ないから、関係ないよ」

相続、と聞くと、資産家の話だと思っている方が多いようです。相続税がかかるような人の話。揉めるほどの遺産がある人の話。

金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査2024年」によると、60歳代の金融資産保有額の平均は1929万円(中央値550万円)という結果でした。

しかし、昨今の不動産価格や有価証券等金融商品の価格の上昇を考えると、実際には自分たちが思っているよりも多くの資産、特に含み益が発生しているケースが多く見受けられます。

そして金額の多寡に関係なく、手続きは発生します。
銀行預金の相続手続き、証券の名義変更、火災保険の名義変更、保険金の請求、不動産の相続登記。 一つひとつは大きな話ではなくても、積み重なるとかなりの負担です。

見えなくなっている資産

ここ数年で特に厄介になっているのが、「見えない資産」の問題です。
昔は、通帳を見れば口座が分かりました。届く郵便物で、どこと取引があるか分かりました。
しかし今はどうでしょう。

種類 特徴
ネット銀行、ネット証券 通帳がない。郵便物もほとんど来ない
スマホの中のアプリ 決済、投資、ポイント、チャージ、いろいろ入っている
サブスクリプション 動画、音楽、新聞、健康食品など。毎月引き落とされている
暗号資産 持っているかどうかすら分からない

あなたは親のスマホに何が入っているか把握していますか?そもそもパスワード、知っていますか?
「デジタル資産」は、本人が亡くなると途端に分からなくなります。どこに口座があるのか。
そもそもどこと何を契約しているのか。

相続の問題は、「お金をどう分けるか」だけではありません。
「何があるか分からない」という問題が、どんどん大きくなっています。

以下は親の金融資産に対してどの手段でアクセスできるかを調査した結果です。

Q.親の金融資産へのアクセス手段や連絡先を把握しているものを全て教えてください 親の金融資産へのアクセス手段や連絡先を把握しているものを全て教えてください 「アクセス方法を把握している金融資産」の中でも、ネット銀行やネット証券などのオンラインアカウントやデジタル資産の把握率が特に低くなっています。証書などの現物が届かないこれらの資産は、アクセス手段はおろか、その存在自体が家族に知られていない可能性もあります。
親が亡くなったとき、多くの人が金融資産に気づかない、そしてアクセスできない事態に陥るかもしれないのです。

筆者が実際に体験したエピソード

最近遠方に住む父が亡くなり、帰省のたびに名義変更や保険などの手続きを少しずつ進めています。 父はエンディングノート的なものを遺しており、手続き関連は簡単に済むと思っていました。 しかしそんな目論見はもろくも崩れ去りました。NISAの解約手続きをしたいのに記載されている証券会社のIDとパスワードが開けない。ノートに記載されていない株券発見。スマホのアプリに入ったままのチャージ残高。メールで気づくサブスク。突然届くAmazonの定期配送。 そんなこんなで全容が把握できておらず頭を抱えている日々です。未だに半分以上の整理が済んでいません…。

 

届けたい人に、届いていない

さて、ここからが今回の本題です。

金融機関の皆さまは、相続について様々な取り組みをされていますよね。セミナー、相談会、分かりやすい資料、デジタルツール。私たちもよく制作のお手伝いをさせていただきます。

その取り組みを見ていて、一つ気になっていることがあります。
届けたい人に、届いているでしょうか?

   Q.相続に関する情報を、あなたはどこから入手していますか?    相続に関する情報を、あなたはどこから入手していますか? 相続に関する情報の入手先に関する質問では、金融機関から情報を入手している人は約12%。
さらに、金融機関が相続に関する情報やサービスを提供していることを知っているかどうかについての質問では、「知らなかった」が67%を超え、残念ながら認知度が高いとは言えない結果となっています。

セミナーに足を運ぶ方は、もともと相続に関心がある方。相談に来られる方は、すでに「自分事」になっている方ではないでしょうか。
しかし、一番届けたいのは、むしろ「うちは関係ない」と思っている層のはず。
でも、彼らはセミナーに来ません。資料も読みません。「関係ない」と思っているからです。
前述の相続に関する情報の入手先への質問でも「情報を必要としていない」と回答した人は約30%。その中にはまさに「関係ない」と思っている層も多く含まれていると思われます。

関心がある人には届いている。関心がない人には届いていない。
当たり前のようですが、ここに大きな壁があると感じています。

「届けたい」と「聞きたくない」の温度差

もう一つ、気になっていることがあります。
金融機関にとって、相続は重要なビジネス領域ですよね。相続資産の取り込み、次世代との関係構築、信頼の醸成。積極的に取り組みたいテーマだと思います。

一方、顧客にとってはどうでしょう。
冒頭で書いたように、多くの人にとって親の将来やお金の話は「聞きたいけど聞けない」話題です。
できれば考えたくない。先送りしたい。

つまり、こういう構図があります。

話したい金融機関 × 聞きたくない顧客

この温度差を意識しておくことは、大事だと思うのです。
どんなに良い情報でも、「聞きたくない」人には届きません。届けるには、入り口の工夫がいるのではないでしょうか。

先生

行政書士に聞いたお客様のリアルな悩み

現場の声を知り尽くすCFP®(J-FLEC認定アドバイザー)・行政書士の田久保 誠先生から実際の声について教えていただきました。

Q.どのような相続の悩みが多いですか?

A.どの金融機関にどれくらいの資産があるのかを把握されていない方が圧倒的に多いです。 特に金融機関の合併で今では見ることのなくなった名前を見つけた、或いは親が転勤族で遠方の金融機関の通帳を見つかった場合などの対処法についての質問はあります。
今は同居されていない方が多いので、郵便物の整理をしていてそこで初めて各種ローンの借入があったのを知ってどうしたらいいのかという相談もありました。   

Q.親の「いざという時」のためにどのような備えが必要ですか?

A.ベストは、ご両親から保有する口座等の情報を教えてもらうことです。 ただし、多くの場合はそううまくいきません。ただし、株取引を行っている方の方が比較的教えているという傾向もありましたね。 一例として実家に行ったときに郵便物があればそれを確認してみるという方法もあります。 また使っている文房具等に金融機関の名前があればその金融機関を利用している可能性は否定できませんね。 今ならエンディングノートがあれば少しは纏めて貰えてるのかな、と期待してもよいかもしれません。

Q.家族間で資産について話しやすくなるにはどうすればいいですか?

A.先ほど述べたように、資産のことを聞いても多くの場合は意固地になってしまい、話がこじれることの方が多いです。 これはそれまでの親子関係の良し悪しとあまり関係ありません。また、お金の話は夫婦間より親子間の方がしていない印象があります。
一例ですが、最近流行りの特殊詐欺の話から家の防犯・電話の設定等の話をし、その流れで資産のことも触れるという方法もあります。 つまり、親子間で共有・共感できるお金以外の話題からアプローチすることで比較的お金の話に持っていきやすくなる可能性は高いです。  

 

どうすれば届くのか ―4つの提案―

ここまで「届いていないのでは」という話を書いてきました。では、どうすれば届くのか。私たちなりに考えたことを、いくつか書いてみます。

1. 入り口を変える

「相続」「終活」という言葉だと入り口としては重たく感じますが、

たとえば
  • 「親の銀行口座がいくつあるか、把握してる?」
  • 「もし明日、親のスマホが開けなくなったら?」
  • 「父が亡くなったら母は年金だけで暮らしていけるんだっけ?」

こういう切り口なら、受け手にとってもより身近な課題として受け入れやすくなるかもしれません。

2. 「正しさ」より「共感」を先に

「早めに準備しましょう」は正論です。でも、正論は届きにくい。

たとえば
  • 「準備は正直面倒ですよね」
  • 「なかなか話しづらいですよね」
  • 「そのお気持ち痛いほど分かります」

このようにまず共感があると、その後の情報が入りやすくなります。

3. まずは「棚卸し」から

相続対策というと、遺言や信託といった大きな話になりがちです。
でも、最初の一歩は「何があるか把握する」ことではないでしょうか。

たとえば
  • 銀行口座、証券口座、保険、不動産、サブスクなどなど

一覧にするだけでも価値があります。そのプロセスが、親子の会話のきっかけになるかもしれません。

4. 「困った話」だけでなく「良かった話」を

相続のコンテンツは、トラブル事例が多い印象です。
注意喚起としては有効ですが、怖い話ばかり聞くと、人は目を背けたくなります。

たとえば
  • 「親と話してみたら、意外とすんなり教えてくれた」
  • 「資産や手続きを一覧にしたら、お互い安心した」
  • 「特殊詐欺などの防犯対策のためと提案したら、親も納得してくれた」

そういうポジティブな事例があると、「自分もやってみようかな」と思えるかもしれません。

「長生きするからこそ、今のうちに整理しておく」

「人生100年時代」だからこそ「早めの相続の準備」。
この二つをセットにして考えることで、私達の未来はより安心したものに変わっていくはずです。 最も届けたい人に届いていない現状を変えるためにも、金融機関側も情報発信方法の切り口を変え、自分事として受け止めてもらえる方法を考えてみてはいかがでしょうか。

 

まとめ

今回お伝えしたかったのは、「届けたい人に届いていないかもしれない」ということです。
相続に関心がある層には、情報は届いています。届いていないのは、「うちは関係ない」と思っている層。そこに届けるには、「何を伝えるか」だけでなく、「どう届けるか」が重要ではないでしょうか。

アイフィスは情報伝達や、資料の作成など、「伝える」にこだわり、「伝えるのその先へ」というスローガンを掲げて日々の制作に取り組んでいます。 出し手の考えによる”伝える”ではなく、受け手に伝わり、受け手側の行動に変化が生まれる、それこそがアイフィスが目指している「伝え方」です。
生活者の感覚、言葉の選び方、入口の設計、共感の作り方。そういったノウハウを活かし、今回のテーマである相続の課題についてもお役に立てればと思っています。

2026年のアイフィスジャパンもどうぞよろしくお願いいたします。

※記事監修:田久保 誠(CFP®/行政書士)

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