最近、ドル円相場がニュースで話題になることが増えましたね。「円安」という言葉がニュースでよく取り上げられる機会も増えています。ドル円や円安という言葉が関係する取引が「外国為替証拠金取引」、通称、「FX取引」です。
このFX取引の最大のメリットは、レバレッジを活用できる点でしょう。レバレッジとは、証券会社に証拠金を預けて、より大きな取引ができる仕組みのことです。日本国内では証券会社に預けた証拠金の25倍までの取引が可能となっています。このレバレッジを活用すれば、小さな投資資金で大きな利益を狙えるチャンスがあり、人気となっています。
これからFX取引を始めたいという初心者の方も多いでしょう。しかし、以下のような疑問や不安があるかもしれません。
「FX取引はいくら用意すればいい?」
「初めてなのでリスクを最小限に抑えたい」
「少額取引で狙える利益はどのくらい?」
「少額取引におすすめの取引手法は?」
結論から言うと、少額取引ができるFX業者があります。必要証拠金は約6円からスタートできます。もちろん、狙える利益は少額ですが、できるだけリスクを最小限にFX取引を試してみたい方に最適です。
今回の記事では、FXの少額取引について解説していきます。
最小取引単位数を確認しよう
FX業者によって、最低取引単位が異なります。ロット数とはFX取引における取引量のことです。ほとんどのFX業者では、「1ロット=1,000通貨」と設定されています。このロット数を調整することによって、リスクを調整することができるのです。
ロット数が上がるほど、利益も大きくなりますがリスクも比例して大きくなります。
ここで大切なのが、各証券会社の最小取引単位です。ほとんどのFX業者では「1ロット=1,000通貨」が主流ですが、「1ロット=1通貨」「1ロット=100通貨」というように、より小さい最小取引単位を提供しているFX業者もあります。
最小取引単位が小さければ小さいほど、選択肢が多くなります。できる限りリスクを抑えてFX取引を体験してみたいと思っている初心者の方であれば、最小取引単位が小さいFX業者を選ぶのがおすすめです。
もちろん、狙える利益は小さいですが、相場が予想外に大きく変動した場合でも限りなくリスクを少なくできます。
用意する投資金額はいくらから?
最小取引単位が1通貨となっている証券会社でドル円を取引する場合、必要証拠金は約6円(ドル円=130円)です。しかし、1通貨単位で取引をするとしても、6円の投資金額では不十分です。
例えば、1通貨単位のドル円買いポジションを保有するための必要証拠金は約6円ですが、口座残高に仮に6円しかなかった場合、スプレッド分がマイナスとなるため、エントリーした瞬間にポジションが強制決済されてしまいます。
ポジションの強制決済を避けるため、FX取引をする際には、必要証拠金よりも大きな金額をFX取引口座に入金する必要があります。
ところで、FXには「レバレッジ」という仕組みがあります。そして、実際の取引に適用されるレバレッジのことを「実効レバレッジ」といいます。
FX取引で利用できるレバレッジは最大25倍ですが、ロット数、FX取引口座に入っている金額(口座残高)、必要証拠金の関係で実効レバレッジが決定されます。
ドル円の1通貨単位のポジションを保有する際のレバレッジと証拠金の関係をシミュレーションしてみましょう。ドル円レートは130円で計算します。
ドル円の1通貨単位のポジション | |
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口座残高 | 実効レバレッジ |
6円 | 25倍 |
7円 | 20倍 |
13円 | 10倍 |
26円 | 5倍 |
130円 | 1倍 |
ドル円の買いポジションを1通貨保有したい場合、最低130円以上が口座内にあれば、実効レバレッジが1倍以下となるため、理論上ポジションが強制ロスカットされることはありません。
しかしFX取引のメリットであるレバレッジを活用しないともったいないですね。
FX初心者の方であれば実効レバレッジ2倍〜3倍、少し慣れてきたら5倍〜10倍が目安となるでしょう。実効レバレッジが5倍となるための必要証拠金と取引量の関係をシミュレーションしてみましょう。
ドル円の買いポジション | |||
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取引単位 | 必要証拠金 (固定25倍) |
実効レバレッジ5倍に必要な証拠金 | 130円から131円まで変動した場合の利益 |
1通貨 | 6円 | 26円 | 1円 |
100通貨 | 520円 | 2,600円 | 100円 |
1,000通貨 | 5,200円 | 2万6,000円 | 1,000円 |
1万通貨 | 5万2,000円 | 26万 | 1万円 |
実効レバレッジ5倍と考えると、ドル円の1通貨を保有するのであれば26円の証拠金、1,000通貨を保有するのであれば2万6,000円となります。
しかし、130円から131円まで価格レートが変動したとき、1,000通貨であれば1,000円の利益となりますが、1通貨では1円の利益です。ドル円の価格レートで1円の変動=100Pipsとなり、これは非常に大きな値動きです。
そのため、1通貨のポジションを保有するだけでは、利益は全く期待できないと考えたほうがよいでしょう。FX取引を体験したいトレーダーは1通貨で試してみて、取引ツールの取り扱い方法や基本的なFXの仕組みを理解したら、1,000通貨単位の取引に挑戦してみましょう。
少額取引におすすめのトレードスタイルは?
ほとんどのFX業者の主流となっている1,000通貨単位以下の取引は、収益というよりも、取引ツールの使い方やFX取引の体験です。前章でも触れましたが、1通貨単位や100通貨単位では、まとまった利益は期待できません。ドル円が1円(100Pips)変動しても、1通貨では1円、100通貨であっても利益は100円だからです。
この章では1万通貨以下のポジションでの取引を「少額取引」として扱います。
少額取引ならスイングトレード
1通貨や100通貨といった1,000通貨未満の取引ができる主なFX業者では、数秒〜数十秒といったスキャルピング取引は利用規約で禁止もしくは制限されています。
利用規約に抵触することを避けるため、1,000通貨未満の取引を提供しているFX業者であればデイトレードもしくはスイングトレードがよいでしょう。利益を狙いたいのであれば、数日単位でポジションを保有するスイングトレードがおすすめです。
スイングトレードは数日間ポジションを保有して、1回の取引でまとまった利幅を狙う取引戦略です。エントリーや決済の判断に時間を掛けられるため、じっくり相場を分析した後から注文ができるのがメリットでしょう。
スイングトレードで重視するべきなのは「スワップポイント」です。スワップポイントとは、各通貨の金利差を調整する仕組みのことで、日本時間の朝にポジション量に応じて付与されます。このスワップポイントは各FX業者によって異なっているため、事前に確認が必要です。
一般的にスイングトレードでは1時間足や4時間足を利用します。
例えばドル円の場合、1回のスイングトレードの利益を100Pips、ストップロスを50Pipsに設定します。この場合、1,000通貨であれば、利益は1,000円、損失は500円となります。10回の取引をして勝率が60%であれば、勝ちトレード6回・負けトレード4回となるので4,000円の利益となります。
少額取引ができるFX業者ランキング | |||||
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1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
FX業者 | SBIFXトレード | 松井証券 | GMOクリック証券 | マネーパートナーズ | OANDA |
最小取引単位 | 1通貨 | 1通貨 | 1000通貨 | 100通貨 | 1000通貨 |
ツール | △ | 〇 | 〇 | 〇 | ◎ |
スプレッド | ◎ | ◎ | ◎ | 〇 | 〇 |
約定力 | 〇 | 〇 | ◎ | ◎ | 〇 |
注文方法 | 〇 | △ | 〇 | 〇 | 〇 |
1位:SBI FX
SBI FXは1通貨単位で取引ができるFX業者です。SBI FXのメリットはスプレッドが非常に狭いことです。ポジションを保有したとき、スプレッド分がマイナスとなりますが、少額取引かつスプレッドが狭いのであれば、リスクを限りなく抑えられます。
また、スイングトレードで重視するスワップポイントが高いことも魅力の1つ。例えば、ドル円の買いポジションを保有していれば、スワップポイントが付与されます。
2位:松井証券
松井証券は100年以上の歴史を持っている老舗FX業者です。
最小取引単位は1通貨であるため、リスクを抑えて取引したい人に最適です。また、松井証券では固定レバレッジを選択できます。少額かつリスクを最小限に抑えたいという人におすすめのFX業者です。
3位:GMOクリック証券
GMOクリック証券は株式やFX、CFDなどを取り扱うインターネット証券会社です。
2022年10月3日(月)約定分より、店頭FX取引サービス「FXネオ」の最小取引単位が1,000通貨単位(約5000円)に引き下げられました。これによりトルコリラなら約300円から取引を行えるなど、初心者の方でもお手頃にFX取引を行えるようになりました。
4位:マネーパートナーズ
マネーパートナーズは100通貨単位の取引が可能なFX業者です。マネーパートナーズには「パートナーズFX口座」と「パートナーズFX nano口座」の2種類の口座タイプがあります。100通貨単位の取引は後者のnano口座が対応しています。前者のパートナーズFX口座は、最小取引単位が1万通貨となっています。
100通貨単位であっても、ドル円であれば520円(1ドル=130円で換算)の必要証拠金で取引できます。マネーパートナーズは約定力にこだわっているFX業者です。
5位:OANDA証券
OANDA証券は「fx Trade」「TradingVie01.3w」「MT4」「MT5」というように、複数の取引ツールの提供をしていることが特徴です。この中で1通貨単位の取引に対応しているのは「fx Trade」のみです。
情報提供も非常に豊富で、通貨強弱チャートや各種分析ツールの提供をしています。初心者の方であれば、少額取引が可能な「fx Trade」を試してみて、その後、高機能なチャート分析ツールを備えるTradingViewに移行できるでしょう。
また、MT4/MT5では自動売買取引も可能で、様々な取引スタイルに挑戦できるのがメリットです。
FXを体験するならスキャルピング
スキャルピングとは、数秒から数分と極めて短い取引時間で、何度も売買を繰り返して利益を積み重ねる手法です。このスキャルピングのメリットは、とにかくFX取引のエントリー・決済を繰り返すため、FX取引の経験を短期間で積むことができる点です。
スキャルピングにおすすめの通貨ペアは、スプレッドが狭く人気が最も高いドル円(USD/JPY)です。
一般的にスキャルピングで利用する時間軸は1分足です。
例えば、上記のドル円1分足チャートでは、下降トレンドが発生しています。しかし、スキャルピングでは、数秒〜数分単位の取引であるため、大きな流れではなく、ローソク足の動きを分析したりしながら買いエントリー・売りエントリーをしながら利益を稼ぎます。
例えばドル円の場合、1回のスキャルピングの利益を10Pips、ストップロスを5Pipsに設定します。この場合、1,000通貨であれば、利益は10円、損失も5円となります。10回の取引をして勝率が80%であれば、勝ちトレード8回・負けトレード2回となるので70円の利益となります。
大きな利益は狙えませんが、取引の体験を多くしたいのであれば、スキャルピングが最適です。
1,000通貨以下の取引単位を提供しているFX業者のほとんどは、数秒単位のスキャルを禁止もしくは制限している傾向があり、スキャルピングができるFX業者は限定されています。
例)少額のスキャルピングにおすすめのFX業者ランキング | |||
---|---|---|---|
1位 | 2位 | 3位 | |
FX業者 | ヒロセ通商 | 外為ファイネスト | 外為どっとコム |
最小取引単位 | 1,000通貨 | 1,000通貨 | 1,000通貨 |
ツール | ◎ | 〇 (MT4/MT5) |
〇 |
スプレッド | 〇 | ◎ | 〇 |
約定力 | △ | ◎ | 〇 |
注文方法 | 非常に豊富 | △ | 〇 |
情報 | 豊富 | × | ◎ |
1位:LION FX(ヒロセ通商)
LION FXの最大の特徴は、取引ツールの注文方法が非常に豊富であることと、ニュースなどの情報がとても多いことです。注文方法には、通常注文の他にドテン注文決済もできるため、スキャルピングに適した取引環境でしょう。
ただし、経済指標の発表の前後などはスプレッドが拡がりやすく、約定力も落ちてスリッページが発生する可能性があります。事前にスリッページ制限を取引ツール上で設定できます。
2位:外為ファイネスト
外為ファイネストはスプレッドも狭く、スキャルピングの制限が一切ないFX業者です。取引ツールはMT4/MT5という世界で最も利用されている取引プラットフォームを提供しています。
スキャルピングは制限なしで、約定力・スプレッドもFX業者の中では優秀な水準を維持しています。
取引ツールは慣れるまで少し時間が掛かるかもしれませんが、オンライン上の様々なインジケータ・ツールを利用できるため、トレーダーが自由にカスタマイズできます。外為ファイネストの場合、0.01ロット=1,000通貨であり、1ロット=10万通貨となるため注意してください。
3位:外為どっとコム
外為どっとコムのメリットは、レポートや通貨ペアに関する情報提供が非常に豊富な点です。初心者の方がFX取引を学ぶ環境が整っており、学びながらスキャルピングで経験を積むことができるでしょう。
少額取引で慣れたらロット数を増やそう
ここまで少額取引について解説してきました。1,000通貨単位未満で取引できるFX業者であれば、損益の変動が激しいといわれるFX取引でも、リスク許容度に合わせて挑戦することができます。
FX取引に興味はあるけれど全く未経験・FX取引の流れをこれから学ぶ人は、ぜひ少額取引から挑戦してみましょう。
ある程度、取引ツールやインジケータ、相場の見方が把握できたら、ロット数を少しずつ増やしてみましょう。各FX業者によって、特徴やサービスが異なるため、ぜひ公式サイトをチェックしてみてください。
中島翔
この記事の監修者
プロフィール:学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。
その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。
あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。
さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。
その後coincheckで仮想通貨取引所のトレーダーを経験し、NYのブロックチェーン関連のVCを経て、金融コンサルティングを中心としたCWC株式会社を設立。
金融業界に精通して幅広い知識を持つ。証券アナリスト資格保有。
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